遺言書作成 2015/8/14up 2019/8/15更新ホームへ

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遺言書を残すケース

    • 相続人のうち一人に多く残したい。
      遺留分に配慮したうえで、財産の配分を考えます。

    • 財産の中に占める不動産の割合が多い
      不動産の承継先だけでなく、相続税の納税資金の確保についても配慮します。

    • 財産の一部を寄付したい。

    • 遺言によって、お世話になった人や大切な人に財産をのこせます。財産だけでなく、感謝の言葉や仲良く暮らすようにという気持ちを伝えることが出来ます。

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遺言の形式

 
  公正証書遺言 自筆証書遺言
概要 ・公証役場で2人以上の立会人の下に、遺言の内容を公証人に口述し、公証人が遺言書を作成します。

・全文と日付および氏名を自書し、押印して封書に入れる。

遺言者の死亡後、家庭裁判所の検認手続きが必要です*下記欄外ご参照

長所

・内容が明確で、安全確実で無効になる惧れはほとんどありません。

・偽造・紛失のおそれなし

・いつでも、どこでも作成できます。

・誰にも知られずに作成できます。

作成時の費用ほとんどかかりません。法務局に保管を申請すれば保管費用がかかる。

短所

・立会人(証人)が必要です。2人以上

・費用がかかります。

・形式の不備や、不明確な内容になりがちで、後日トラブルがおこる可能性があります。

偽造・隠匿などの心配があります。

検認には手間と時間がかかりますが、申告期限に間に合わせなければなりません。*下記欄外ご参照

2020年7月10日より自筆遺言証書は遺言者自身による申請で法務局での保管が可能となります。亡くなった後に相続人、受遺者或いは遺言執行者から、その保管証明書の交付請求、その閲覧請求、遺言書の画像情報証明書の交付請求をすることができます。また、法務局保管にかかる遺言書は家裁の検認不要とされます。保管費用など詳細はこれからですが、かなり公正証書遺言に近づき、利用しやすくなりました。(2019/6/23up) 重要な変更です。

 

変わる遺言制度】 末尾注意併せてご参照

変わる遺言制度

秘密証書遺言について  遺言者が遺言内容をだれにも知られたくないという場合に使われますが、実際にはほとんど使われていません。     

  3  遺言書の作り方

 

(1) 自筆証書遺言(じひつしょうしょしょ いごん)

注意点

  • 遺言書の全文を自分で書くこと、 用具、筆記用具に決まりはない。
    (代筆やパソコン作成は不可。ただし、H30民法改正により全文の自書を要求している従来のの自筆証書遺言の方式を緩和し,自筆証書遺言に添付する財産目録については自書でなくてもよいものとする。ただし,財産目録の各頁に署名押印することを要します。

  • 日付を明確に書くこと
  • 印鑑必要(実印がベター)
  • 氏名を自分で書くこと
  • 書き間違えたとき訂正方法:二本線を引き加除訂正し、末尾に、その箇所を示して、訂正内容を付記、署名。文中の訂正箇所(二重線)に押印します。 別添遺言書具体例末尾ご参照

パソコンで薄い灰色で下書きし上からなぞれば比較的簡単に作成できる。(小池弁護士の下記遺言作成10のポイントご参照)

 

(2) 公正証書遺言

作成時に費用は掛かるが、安全で確実な遺言です。また、検認の必要はなくすぐに相続の手続きに入れます。まずは、公証役場に相談してみる。

信託銀行で遺言信託として遺言書の作成、保管・執行までを行うサービスがあります。取扱い手数料がいろいろかかります。

老いゆかば、残る急務は968、子や孫にまずは自筆で遺言(いごん)すること 

(念のため、次いで、公正証書遺言)   弁護士小池洋吉

 4  民法968条自筆証書遺言を書いてみよう

相続の専門家小池弁護士の遺言書作成10のポイント
 

1. 全文・日付・署名を全て自書して押印します。但し、財産目録は (登記簿等の) 写しを引用できることになりました (必ず頁ごとの署名・押印が必要です)。書き間違いがあると、その「訂正」はとても面倒ですが、但し、秘策があります。→*1.

2. 本文は簡潔、明瞭を旨とし、配分理由や思いを記載したい場合は本文の後ろに「付言事項」として記載する。

3. 「任せる」「譲る」「贈与する」など、法律上の意味が相続と異なってしまう結果となりかねない ので相続人には「相続させる」、それ以外の者に対しては「遺贈する」と書きます。但し、配偶者と同居してきた所有建物に、配偶者をそのまま 住まわせたい場合は、「配偶者○○○○に次の建物における配偶者居住権を遺贈する」と書いて、その建物を記載します。

(相続人に対する「遺贈」は、執行段階の面倒があったりするので、原則避けた方がよいです。)

4. 財産を取得させる相手が先に亡くなった場合に備え、必要があれば、補充的予備的遺言をします。

5. 人物を特定して遺言執行者の指定をし、合わせて、遺言執行者の権限を具体的に記載しておきます。

6. 財産を明確に特定し、かつ、漏らすことなく全財産について処分を定めましょう。(その他一切の財産を○○に相続させる」等)

7. 銀行預金等は、預金額等が変動するので残高等の特定はせずに、銀行名・支店名・預金の種類までの記載で足りる。最後に「その他の金融機関」として、遺言後に他の銀行に設けられる場合も漏れのないよう、記載しておくこと

8. 遺言で法定相続分にとらわれない遺産分けができますが、記載するときは主観を排して、客観的、明確に記載し、かつ、遺留分を侵さぬよう注意しましょう。

9. 借金は、全相続人が相続分に応じた割合で、負担することになります。但し、内輪での指定として、相続人間での負担者、負担割合を定めることは可能です

10. 預貯金・現金の配分を工夫して、相続人が相続税の支払いに困らぬよう配慮しましょう。生命保険金の受取人を遺言で変更できるので、調整に使えます。但し、生命保険金の受取人変更については、相続開始後すぐに保険会社に変更の件を通知すべきことを記載しましょう。


→*1.民法968条が、自筆遺言証書の作成方式を、「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」と定めています。

そのため、保有する財産が多種・多様に多数存在するケース等の場合、相続財産の目録を調えること自体大変なのに、それを全て自書するのは誠に難儀なことであった訳ですが、平成30年7月の相続法改正により、平成31年1月13日からは、その目録については、自書するを要しないこととなりました。

登記簿謄本(登記事項証明書)や契約書添付の物件目録等、当該財産が記載された書面の写しで良いことになります。但し、目録の各頁ごとに署名し、押印することが求められ、紙の両面に記載がある場合は、その両面に署名・押印を要するとされていますから、要注意です。また、基本的約束事の所で述べましたように、元々契印は不要とされていても、重要財産の表記を「写し」の添付で代用する訳ですから、後でその真贋が紛議の種とならぬよう、契印によって書面としての一体性を確保した方が良いと思います。

自筆証書遺言は、自筆でないと「遺言無効」とされてしまいます。筆跡によって遺言者の作成にかかることが分かることから、自筆であることがことさら重要とされます。

しかし、誤字・誤記が生じたときの、法に定められた正規の訂正方法が面倒で、かつ、普通の訂正の仕方ではないため、自筆遺言のつまづきの元と言われます。そこで、間違いの生じ得ない、パソコンを使っての秘策があります。

自書する「全文・日付・氏名」の内、間違いの生じやすい「全文」については、予めパソコンで、自筆遺言例を参考に十分推敲し、内容が確定したら、これを文字の色指定によりギリギリ判読できる薄墨色 (うすいグレー) で印刷します。

そして、全文を筆ペンでゆっくりなぞれば誤字・誤記は生じません。それでも、訂正したい誤りが生じた場合は、法の定めに従った正規の方法によるか、改めて作り直しするか、ということになります。

「何度も作り直して良いのでしょうか?」というお尋ねをよく受けて、 「それは一向に構いません。以前のものを廃棄するか、新たな遺言書の冒頭に「○年○月○日作成にかかる私の遺言書は (或いは、「従前の私の遺言書は全て」 ) 撤回します」旨記載しておけば足ります。」 と申し上げていましたが、平成30年7月の民法改正により事情が変わってしまい、複数遺言は、極力避けるよう十分心して臨まれる必要が、以前にもなかった訳ではありませんが、一層生じることとなりました。

書き間違えたとき訂正方法:二本線を引き加除訂正し、末尾に、、その箇所を示して、訂正内容を付記、署名。文中の訂正箇所(二重線)に押印します。 別添遺言書具体例末尾ご参照

「押印」は、認印でもよく、さらに、平成に入って、自筆遺言については指印でもよいとされました (最判平成元年2・16) 。(以上小池弁護士HPから)

注意! 令和2年7月10日からは自筆証書遺言の法務局保管を申請できます⇒検認不要

  自筆証書遺言を最寄りの法務局で、有料で保管できる制度がスタートします。2019.08.15

  • 自筆証書遺言は、紛失したり改ざんされる恐れがあったが、保管制度が始ればそうした事態は避けられる
  • 内容は別にして、自筆証書遺言には形式にルールあり、形式不備だと無効になる。例えば署名や押印、作成年月日といった必要事項をきちんと記載しないと、後で無効になるリスクがあります。制度を利用すれば、預かる際にこうした点が記載されているかどうかを法務局の事務官が確認するので、書式の不備の心配がなくなります。
  • 検認の必要がなくなります
  • 費用は現時点未定

注意点 内容については事務官はチェックしてくれないので、完成前に一度税理士などにチェックしてもらうのがベターか。

  • 表現の仕方 「相続させる」「遺贈する」とはっきり書く。特定の記載方法がある。
  • 記載漏れした財産があるとトラブルの元となる。
  • 遺留分に配慮する
遺言書の具体例
 平成30年改正相続法

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